Lotus paradise

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◇シャルロットのスピーチ

◇シャルロットのスピーチ

 「イラクの子供たちはどうなるの?」

 イラク攻撃を考えるとき、人々が思い浮かべるのは軍服姿の
サダム・フセインや口ひげをはやした銃を持つ兵士、
アル・ラシッドホテルでロビーの床に「犯罪者」と書かれた
ジョージ・ブッシュ元米大統領のモザイク画でしょうか。
 でも考えてみてください。イラク国民2400万人のうち半分
以上は15歳より下の子供です。1200万人は私と同じような
子供なのです。私は13歳になりますが、イラクの子供は少し
年上か年下の子供です。女の子ではなく男の子かもしれない。
髪の毛は赤毛ではなく茶色かもしれない。しかし、ちょうど
私みたいな子供なのです。私を見て、よく見てください。
イラク攻撃を考えるとき思い浮かべないといけないのは私です。
みなさんが殺そうとしているのは私なのです。

 私は運が良ければ、一瞬で死ぬでしょう。91年2月16日、
バグダッドの防空ごうに落ちたスマート爆弾で殺された300人
の子供のように。爆風を伴う激しい炎により、母子の姿が壁に
焼き付けられました。みなさんは今でも石壁に張り付いた黒い皮
膚を、湾岸戦争勝利の記念品として、はぎ取ることができます。
 しかし、運に恵まれず、時間をかけて死ぬかもしれません。
今、バグダッドの小児病院の「死の病棟」にいる14歳の
アリ・ファイサルのように。アリは湾岸戦争で使われた劣化
ウラン弾が原因とされる悪性リンパ腫(ガン)になったのです。
また、私は苦しみながら死ぬかもしれません。寄生虫に内臓を
食われている生後18カ月のムスタファみたいに。ムスタファは
わずか25ドルほどの薬で完治できるのに、制裁のために薬が
何もないのです。
 私は死なずに、外から見えない精神的なダメージを抱えて
生き続けるかもしれません。サルマン・ムハンマドのように。
彼は91年のイラク攻撃(湾岸戦争)で妹と生き延びましたが、
その時の恐怖を忘れられません。サルマンの父は、生きるも
死ぬも一緒と家族を同じ部屋で寝させました。サルマンは
今でも空襲警報の悪夢にうなされます。
 アリのように孤児になるかもしれません。アリが湾岸戦争で
父を失ったのは3歳でした。3年間毎日、ほこりをかぶった
父の墓を通い「お父さん、大丈夫だよ。出て来ていいよ。
お父さんを閉じ込めた奴はいなくなったよ」と叫び続けました。
でも、アリ、そいつらが戻ってくるみたいなの。
 ルアイ・マジッドのように無傷で済むかもしれません。
ルアイは湾岸戦争で学校に行く必要もなかったし、いくらでも
夜更かしできたでしょう。しかし、今、教育を受けなかった
ために、路上で新聞を売って生活しようとしています。
 これが自分の子供やめい、おい、近所の子だったらと
想像してほしい。みなさんの息子が手足を切られて苦痛で
うめき声を上げても、和らげてあげることもできないと想像
してください。みなさんの娘がビルの瓦礫の下で埋もれて
泣き叫んでいるのに、助けられない。みなさんの子供があなた
が亡くなったのを目の前で見た後、お腹をすかし1人で町を
さまよっているのです。
 これは冒険映画でも空想でもビデオゲームでもありません。
イラクの子供たちの現実なのです。最近、国際的な調査団が
イラクを訪問し、戦争が起きたことが子供たちにどういう影響を
与えているかを調べました。子供のうち半分は何のために生きて
いるのか分からないと答えました。本当に小さな子供さえ戦争
を知っており、不安がっていました。5歳のアッセムは「銃と爆弾
と空気は冷たくも熱くもなる。僕たちは焼けちゃうんだよ」
と言いました。10歳のアセサルのブッシュ米大統領あてのメッ
セージがありました。「イラクの多くの子供が死ぬでしょう。
あなたはそれをテレビで見て後悔しますよ」という内容です。
 小学校のころ、問題を解決するには、叩いたり、ののしり
合うのではなく、話し合い、「私ならば」の気持ちを持つよう
に教えられました。それは、相手の行動がみなさんにどのような
嫌な思いをさせているか分からせることです。他人の身になって
考えることです。そうすればその人はみなさんのことを理解し、
やめるようになります。
 今、私はみなさんに「私ならば」を、いえ「私たちならば」を
伝えたい。
悪いことが起きるのを救いもなく待っているイラクの子供たちが
「私たちならば」。
何も決めることができないのに、あらゆる結果に苦しめられる
子供たちが「私たちならば」。
声が小さく遠いため聞き取ってもらえない子供たちが
「私たちならば」。
 私たちは明日生きることができないかどうか分からなければ、
怖いです。 私たちが殺されてり、傷つけられたり、未来を奪われ
ようとするならば、怒りを感じます。
 私たちが望むのは両親が明日も生きていることだけなんて
悲しくなります。
 最後に、私たちは途方にくれています。私たちには、
悪いことをしたかどうかも分からないからです。


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